« 再生医療法(5)-省令改正の動向(続) | トップページ | オンライン診療(2)-患者のインフォームド・コンセント(同意書) »

2020年5月12日 (火)

オンライン診療(1)ー米国の場合医療過誤事件は極めて少ない

コロナ禍のため在宅勤務をされている方も多いと思いますが、普段からテレワークの体制を整備していないと、なかなかテレワークにスイッチすることは難しいことを感じています。

  1. さて、コロナウイルス以外の病気で通院しようとするときに、怖いのは院内感染であり、これを回避するための方法として脚光を浴びているのが、オンライン診療です。オンライン診療については、平成9年の厚生労働省の通達において対面診療を補完するものとして認められ、その後複数回の改正を経て、現在では平成30年の指針(令和元年一部改正)に基づき行われているものです。→https://www.mhlw.go.jp/content/000534254.pdf
  2. オンライン診療は糖尿病などの慢性疾患の患者の継続的診療には向いていると言われていたところですが、今般のコロナウイルス禍から、臨時的な措置として、限定はつくものの初診からのオンライン診療が認められています。→https://www.mhlw.go.jp/content/R20410tuuchi.pdf
  3. オンライン診療においては、触診や聴診などができず、患者に関する情報が限定されますし、患者が自身の身体の状態について正確な説明をするとは限らないので、医師と患者の間でコミュニケーション・ミスが生じやすく、従って医療過誤が生じやすいのではないかと思いましたので、オンライン診療の先進国であるアメリカでの実情を調べてみました。
  4. 筆者としては驚きでしたが、米国においてオンライン診療(telemedichine)による医療過誤が問題になった事件を調べた人たちの報告によれば、2018年の1か月の期間において、オンライン診療による医療過誤が争点となったと推定される事件は1件もなかったとのことでした。→https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2729359
  5. これは医療関係者の論文でしたが、さらに法律家の論文を調べたところ、オンライン診療による医療過誤が問題となったケースに関する裁判例はほとんどないと書かれたものもありました。→https://www.natlawreview.com/article/doctor-medical-malpractice-issues-age-telemedicine この法律家の論文では先例らしきものも紹介しており、これもダウンロードして読んでみたのですが、これらの事案の内容は本格的なオンライン診療に関する医療過誤の事件とはいいがたいものでありました。
  6. 医療関係者の論文でも法律家の論文でも同様の結論でしたので、おそらく本当にアメリカではオンライン診療における医療過誤が問題となったケースは極めて少ないのだと思います。
  7. 上記の調査を行った人によれば、その原因として、①患者自身がオンライン診療の限界を認識しており、重大な身体上の問題を持っている場合にはオンライン診療ではなく対面診療を選択していると考えられ、②医師側も重篤な患者と判断した場合には、対面診療を行うことを勧めているので、医療過誤訴訟が起きにくいのではないかとのことです。医師も患者もオンライン診療については、安全運転を心がけているということでしょうか…。
  8. 医療過誤訴訟は患者の死亡や後遺障害といった結果が重大な場合に起こされることが多いと言われているので、納得感のある説明のように思われます。日本でもオンライン診療が増えているという新聞記事がありましたが、米国と同様に医療過誤訴訟は少ないという結果になるのでしょうかね?今後に注目したいです。
  9. オンライン診療については、これ以外にも色々と論点はありますが、本日のところはこの程度としておきます。

オンライン診療(2)ー患者の同意書(インフォームド・コンセント)へ

« 再生医療法(5)-省令改正の動向(続) | トップページ | オンライン診療(2)-患者のインフォームド・コンセント(同意書) »

医事法・薬機法」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。