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2008年6月24日 (火)

単元未満株式の買取請求権の行使とインサイダー取引規制

本日は金融商品取引法の論点を一つ。

会社法192条によれば、単元未満株主は会社に対して単元未満株式の買取を請求できると規定しています。この規定の意味は、単元未満株式の買取請求をすれば会社としてはそれを断ることは出来ないということだと思います。つまり会社の義務が発生する。

ところで、この単元未満株式の買取請求は、金融商品取引法(以下「金商法」)166条第6項各号のいずれかのインサイダー取引規制の適用除外に該当するのかどうかが論点です。

金商法166条第6項第3号において、反対株主の株式買取請求権の行使の他、「法令上の義務に基づき売買等をする場合」をインサイダー取引規制の適用除外と定めています。単元未満株式の買取請求は、この「法令上の義務に基づき売買等をする場合」に該当するのでしょうか?

実は、古い文献で「インサイダー取引規制実務研究会」が編者となっている「インサイダー取引規制実務Q&A」財経詳報社(平成元年)という本があり、それによれば、金商法166条第6項第3号ではなく第8号の「その他これに準ずる特別の事情に基づく売買等であることが明らかな売買等をする場合」に該当すると書かれています。(なお、当時は、単元株ではなく単位株でしたし、金商法ではなく証券取引法でしたが、趣旨は現在でも生きているという仮定のうえで、内容を変更して引用しています。)「インサイダー取引規制実務研究会」なる組織が何であるかよくわかりませんが、本のはしがきなどを読むとどうやら当時の大蔵省の関係者ではないかと推測しています。

しかしながら、この見解は納得できないのです。何故なら、当時の証券取引法でも現在の金商法でも、第8号には「(内閣府令で定める場合に限る)」と規定しており、内閣府令を見ても単元株の買取請求については明記していないのです。法文上「限る」と書いてあるので、内閣府令に何も書いていなければ、適用除外は認められないというのが素直な解釈だと思います。

そこで、この見解をボツにして、次に金融法務事情1194号に掲載されている神崎克郎教授(当時)の論文を読んでみました。この論文の最後のほうの注で、単元株の買取請求は、インサイダー取引の適用除外である「法令上の義務に基づき売買等をする場合」(金商法第166条第6項第3号)にあたらないと書かれています。(神崎教授の論文も単位株制度、証券取引法時代のものですが、現在でも生きていると仮定して、それぞれを単元株、金融商品取引法と書き換えて引用することにします。)

神崎教授は適用除外にあたらない理由として、「かかる権利行使は、株式の売却と同様、特別の手続を要することなくいつでも認められるからである。」と仰っておられます。

この点が筆者にはどうも納得が出来ないのです。確かに反対株主の株式買取請求の場合には、株主総会で反対の意思表明をするなどといった手続きが必要ですが、単元未満株式の買取にはそのような手続きは必要ではありません。それはわかります。

しかしながら、大御所の先生のご高見に楯突いてしまうのですが、そもそも金商法第166条第6項第3号の趣旨は、少数株主の保護を優先させたということを立法担当官が仰っています。法解釈とは立法趣旨から考えるのが基本なのですが、少数株主の保護と「特別の手続」とが筆者の頭の中ではどうしても結びつかないのです。

「単元未満株式の買取請求は少数株主の保護とは必ずしも関係がないので、適用除外にはあたらない。」というロジックであれば、よくわかるのですが…。

神崎教授の説は、反対株主の株式買取請求の場合、「特別の手続」があるのでインサイダー取引の適用除外になる、とお考えのようにも読めるのですが、そのように考える理由が述べられていません。もしかしたら、組織再編のような場合には、それが臨時報告書や証券取引所の適時開示規則で開示されるので、インサイダー情報は無いとでもお考えなのでしょうか?そうであれば、別に金商法166条第6項第8号において適用除外として規定するまでも無く、同条第1項で解決できると思えるのです。

ということで、ますますわからなくなってしまったという感じです。

どなたか正解をご存知の方は是非教えてください。

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