トップページ | 2008年5月 »

2008年4月

2008年4月30日 (水)

イスラム金融(1)ムダーラバ

さて、いきなりマニアックな話題ですが、最近マスコミで頻繁に取り上げられているイスラム金融について考えていることを書きたいと思います。

その第1回目としてイスラム金融で多用されているムダーラバ(mudaraba)について小生の知るところを書きます。

1. ムダーラバの起源は古く、中世の地中海貿易と言われています。当時隆盛を誇ったイスラム帝国(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%83%A0%E5%B8%9D%E5%9B%BD)は東は中央アジアから西は北アフリカを領土とし、更にはスペインも占領していました。そして、東はシルクロードの交易、西は地中海貿易で潤っていたわけです。イスラム教徒は商業と交易の民であったわけです。

2.ムダーラバはイタリア語ではコメンダ(commenda)と呼ばれており、日本の商法の匿名組合と起源を同じにするものです。日本へはヨーロッパの法制度を経由して輸入されたわけです。従って、日本の匿名組合と類似点が多く、日本人には分かりやすいので、イスラム金融に関す第1回目のテーマとして書かせていた次第です。

3.イスラム金融の邦語文献ではムダーラバを投資信託類似のものと紹介しているものもありますが、その起源を考えるとむしろ匿名組合類似のものと言ったほうが正確ではないかと思います。ちなみにイスラム法の信託はワクフ(waqf)と呼ばれていますが、イスラム金融ではあまり使われていないようです。(もっとも、外国法の信託とムダーラバを組み合わせたと考えられる先例はあります。)

4.ムダーラバは匿名組合と同様にムダーリブと呼ばれる営業者とラッブ・アル・マールと呼ばれる投資家(匿名組合員に相当します。)との間で結ばれる契約です。ムダーラバ契約において、営業者と投資家との間の利益と損失の分配を決めます。

5.ムダーラバが契約の性格を有するので、営業者が倒産した場合、投資家の権利は一般債権者と扱われると考えられます。信託のように、信託財産の倒産隔離が無いということです。(ムダーラバの倒産隔離性の有無について正面から議論している文献は見当たらないのですが、このように考えています。)だから、上記のように外国法の信託を活用したりする例があるのだと思います。

6.ムダーラバについては、まだまだ書くべきことはあるのですが、本日はこの辺まで。

以上

ブログをはじめました。

「皆がすなるブログを小生もしてみんとす…。」ということで、普段仕事や研究の上で興味深いと思ったことを、皆様と共有させて頂くつもりで、このブログを開始することにしました。作者は主として金融法務に携わっている弁護士です。

元々筆不精であること及び超多忙であるため、頻繁に更新をすることは出来ませんし、そのようにするつもりもありませんが、少しでも長く続けることができるように頑張りたいと思いますので、よろしくお願いします。

トップページ | 2008年5月 »